目次

相続税の正しい知識

平成27年1月より相続税の計算の際に用いられる基礎控除額が下げられ、各メディアでも相続税のことが大きく報じられていました。

皆様の中には漠然と相続税についての不安を抱えている人もいるのではないでしょうか?

「正しく理解」することでその不安は解消できます。

以下では簡単に相続税についての考え方を記載していきます。

注意

ご存知のように税についての専門家は税理士です。

個別の税務相談が必要な場合は弊所が提携している税理士をご紹介いたします。

提携税理士も無料相談を実施していますので御安心下さい。

ここでは一般的に公表されている数字や基本的な考え方を明示するに留めておくことをご了承ください。

相続税の計算の仕方

既述のとおり税制の改正により相続税を支払う対象となる人の割合が増えるという事がよく言われています。

ただ、単に不安を煽るばかりの記事も多く見られます。

「相続税の最高税率が55%になった」という記事も頻繁に出てましたが、この最高税率55%が課税されるのは受け取る総額が6億円を超える場合です。

不安になる理由は、相続税が一体いくらかかるのか大体の目安がハッキリしない点にあるのではないでしょうか?

そこで、以下では相続税の計算の仕方を大まかに見ていくことにします。

財産の総額を計算する

最初に取り組むのは相続財産がどれだけあるか計算する、という点です。

不動産、保険金、預貯金などケースに応じて様々かと思われます。

この時、負債(借金)があれば財産の額から引くことが出来ます。

例えば、財産が3000万円で借金が1000万円あれば相続財産は2000万円となります。

同様に葬式費用も相続財産から控除することが出来ます。

不動産や保険金には一定額の控除が認められるケースがありますが、詳細は後半部分を参照してください。

ここでは財産の額が7000万円あったとします。

この7000万円を法定相続分として相続したとするとそれぞれの金額は

相続人相続分相続額
4分の23500万円
4分の11750万円
4分の11750万円

となります。

ヒント:
法定相続分の考え方はこちらを参照してください。

稀に上記金額に相続税率を掛け合わせるように考えている人がいますがそうではありません。

以下、順に見ていきましょう。

基礎控除額を引く

上記で算出した額から基礎控除額を引きます。

 基礎控除額の計算式
3000万円+(600万円×法定相続人の数)

例えば、夫が死亡した場合で相続人は妻と子供が二人いるとします。

上記計算式に当てはめてみると

3000万円+(600万円×3)=4800万円

となります。

最初に計算した財産の額から基礎控除額を引くと
7000万円-4800万円=2200万円

この2200万円が課税遺産総額と呼ばれ、相続税の課税対象になります。

相続割合を考える

次に上記で算出した2200万円を相続割合に応じて金額を当てはめてみます。

今回の例は法定相続分に応じて相続財産を取得するとしておりますので、相続人が妻・子・子の場合法定相続分は

相続人相続分相続額
4分の21100万円
4分の1550万円
4分の1550万円

となります。

相続税の速算表で計算する

上記表にある相続人それぞれの相続額を次の速算表に当てはめます。

基礎控除後の課税価格税率控除額
1000万円以下10%なし
1000万円超~
3000万円以下
15%50万円
3000万円超~
5000万円以下
20%200万円
5000万円超~
1億円以下
30%700万円

では、妻を例に計算してみましょう。

妻の相続額は一つ前の表にあるように1100万円ですから上記表の2番目に該当します。

1100万円×15%-50万円=115万円

同じように子も計算すると

550万円×10%=55万円

となります。

上記で計算した妻と子供二人の全てを合計すると

115万円+55万円+55万円=225万円

となります。これが相続税の総額となります。

勘違いしてはならないのはこの225万円が相続税として支払う金額では無いという事です。

計算があと一つ残っています。

各相続人の税額を計算

まず以下の算式をご覧ください。

相続税の総額×相続人それぞれが相続する金額÷財産(遺産)総額

各相続人が支払う相続税は最終的に上記算式に当てはめて算出します。

既に各項目の数字はこれまでの計算で出ていますので簡単です。

算式最初に出てくる「相続税の総額」とは前項で計算した225万円です。

次に出てくる「相続人それぞれが相続する金額」とは相続人が実際に取得する相続財産の金額です。

今回の例では妻と子(二人)が法定相続分で相続するとしますので、このページ最初に記載した表をもう一度記載します。

相続人相続分相続額
4分の23500万円
4分の11750万円
4分の11750万円

最後に出てくる「財産(遺産)総額」とは一番最初に記載した相続財産の総額です(何も控除していない一番最初の数字です。今回の例では7000万円)。

これを相続人それぞれに当てはめて計算してみましょう。

妻の場合

225万円×3500万円÷7000万円=約113万円
配偶者の税額軽減により相続税は0円(下記参照)。

子の場合

225万円×1750万円÷7000万円=約57万円
子は二人ですから合計で約114万円。

上記が相続人それぞれが支払う相続税となります。

知っておきたい各種控除

上記に記載した内容で相続税の計算の大まかな流れが掴んで頂けたと思います。

実際には色々な控除があるため、上記した相続税の数字は減る可能性が高いと言えます。

配偶者の税額軽減

配偶者は相続財産が1億6000万円まで、若しくは相続財産の2分の1までは非課税とされています。

生命保険金の非課税割合

亡くなった人が生命保険に加入していた場合、その保険金は相続税の対象となります。

500万円×法定相続人の数

上記例で言うと法定相続人は3人ですから1500万円までは非課税となります。

つまり、死亡保険金として3000万円を受け取った場合、相続税の計算の際に最初に考える相続財産の総額には3000万円ではなく1500万円として計算すれば良いという事になります。

その他の控除や特例について

他にも様々な控除が設けられています。

  • 小規模宅地等の特例
  • 贈与税額控除
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 年次相続控除
  • 外国税額控除

上記のように様々な制度が存在ます。

相続財産の種類によって適用できる控除や特例などは変わってきます。

逆に控除ではなく加算されるものとして「相続税の2割加算」と言うものがあります。

これは被相続人の財産を被相続人の配偶者及び1親等以外の者が取得した場合に適用される加算です。

分かりやすい例としては被相続人の兄弟姉妹が相続財産を受け取ったケースです。

被相続人の兄弟姉妹は被相続人の1親等以外ですので、相続税が2割増しとなります。

こうしたようにケースによっては色々と複雑な面も出てくるのが税制であり、御自身で判断するのには非常に危険な部分もあります。

相続財産が高額だったり、財産の評価自体が難しいような物が含まれている場合などは自分で判断せず税理士や税務署に問い合わせるようにしましょう。

補足的に申し上げると税理士と言えども全ての税理士が相続税を得意としているわけではありません。

士業全般に言えることですが、それぞれに得意分野がありますので相談相手は誰でも良いということにはなりません。

弊所が提携している税理士はその点についてのご心配は不要ですので遠慮なくご相談下さい。